扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

名古屋文学サロン月曜会[文学]

  • 2018年2月16日(金) 
  • 月曜会藤ヶ丘会場 島尾敏夫「死の棘」

「あなたはパートナーと愛し合うという事は何だと思いますか。そもそも愛とはなんだと思いますか」


まだ寒い日が続く2月の半ば、名古屋月曜会藤ヶ丘会場 島尾敏夫「死の棘」読書会が開催されました。
(参加者39名、うち初参加者5名)



受付が進む中、当日の参加者達が会場入りしてきました。しかしなぜでしょう?みんななんだかうかない表情・・。
お話を聞いてみましょう。
「本日の読書会がもうすぐ始まりますが、今のお気持ちは?」
「・・・今この会場にいる自分をほめてあげたいよ・・すまないが寝不足なんだ。」
「では次の方へ。今のお気持ちは?」
「何度もキャンセルしようと思ったわ・・・ごめんなさい。今はまだ・・」
と、なんだか陰鬱な雰囲気。いったい月曜会はどうなってしまうのでしょうか。

藤が丘会場は読書会がはじまる前にお楽しみがあります。それは会場であるJAZZ茶房青猫マスターによるJAZZ講座です。
今夜はMichel Petruccianiの「LOOKING UP」。骨の病気であまり身長が伸びないピアニスト、Keith Jarettにスカウトされてあっという間に有名に。明るい曲でとても軽快なメロディーです。



この会場では1ドリンクと特製のお菓子が出ます。本日のお菓子は「バナナと黒糖のもっちりケーキ」しっとりとした味わい!糖分補給で難題に向き合う準備も整います・・!



さていよいよ読書会のはじまりです。

課題本は島尾敏雄の「死の棘」。
島尾敏雄は1917年生まれの作家。妻は小説家の島尾ミホ。孫はイラストやラジオなどマルチに活躍するしまおまほ。
「死の棘」は著者の私小説で代表作。関連本も多く出版されており、映画化もされています。

話し合いが始まり到着した時よりは緊張がほどけた参加者達。
どんな話し合いが行われているかのぞいてみましょう。



「読むのがつらかった・・!」「夫婦喧嘩の繰り返し・・もう笑うしかない!・・でも笑えない」
「終わらない言い争い、進まない毎日・・涼宮ハルヒか!」



読書会の参加条件は課題本の読了。辛い本の感想を共感できると「読んで良かった!」と思います。しかしこの本は「読むのが辛かった」で終わらせるのは非常にもったいないのです。
600ページ超えの展開のない物語ですが、描写が書き込まれており読ませる力があります。

敏雄の浮気により心を壊してしまった妻ミホ。ミホの尋問は毎日続きます。
朝、昼、晩。家の中、近所、電車の中。季節が変わってもおかまいなし。
なんとかたどり着いた病院でも診察中に敏雄を殴るミホ。

「なぜ別れなかったのか」「なぜ逃げずにお互いここまで固執したのか」

   「敏雄とミホは供依存状態だ」



そうなのです。抜けられない無限ループの2人の関係もお互いが求めていた結果だったのかもしれません。
お互いを縛りあい傷つけ合うことで相手の存在と愛情を引き止めようとする事をだんだんと楽しむようになっていたのです。

死の棘にはこんな一文があります
「本当に逃げるつもりなら、いつでも逃げおおせるはずなのにとこころの底で思い、てのひらから蝶を逃がしてやるように、ほんの少し私がぐずつけば、すべては終わってしまうのではないか。
中略
しかし私は夢中で妻を追いかけ、しっかりつかまえてしまう。いきをはずませ逃げて行く妻に追いすがりつかまえたときの充実した手応えが忘れられず、つかまえられる程度に逃がすことをくりかえしているみたいだ。」



敏雄について女性陣からは、たくさんの意見がでました。
「崩壊した家庭生活の体験を小説として書いたトシオはかなりしたたか」「ただただ義務感と自己保身しか感じられない」「何をしても結局許してもらえると思っている、ミホの言いなりで主体性がない。」

「ダメンズ!」「クズだ!!」「どクズだ!!!」

「・・・娘にはこういう男はやめなさいと言いますね」



話し合いは2人の関係についてどんどん深く語り合われました。
自然と個人の恋愛観や夫婦の話になり盛り上がりました。

「私もミホまではいかないけれど、恋人をせめて追いつめた事がある。今は彼を苦しめた事を後悔している」「ミホのように極端にはならないとしても、誰しも10%だけでもミホのような心は持っているのではないか。」なので少し気持ちがわかるところもある

この二人の関係を
「早く別れた方が良い」か「お互いが必要なら問題ない」と思うか。
正解はありません。読書会に参加したあなたの心に答えはあるのです。



それでは、今回のベストドレッサーの発表です。
今回のテーマは「情事」。
・・・情事?服で??何言ってるの???

という疑問はおいといて、各テーブルごとに選ばれた御洒落さんをご紹介します。
今回はなんと7人中6人が女性!2人が和服姿です。

「ミホさんと同じ赤い半襟で・・」「足袋をぬいで想いを伝えるイメージ」「勝負スーツに香水・・今夜は指輪をはずして」「薔薇のタトゥースタンプを肩に」「白のレースでいつもより女らしく」「レースのストッキングに赤い靴で」

受賞者の皆様は、猫町倶楽部独自の知的さと、冷たい夜空のような美しい黒髪のをもった方ばかり。・・・これが情事!濃厚な色気が会場を包みます。

皆様おめでとうございます!









読書会の後は懇親会。ビールやジュースで乾杯!
読むのが大変だった本だからこそ、この一杯は格別です。
読書会中は別テーブルで話せなかった友人同士も、はじめましての人をまじえて気楽に語らいます。懇親会中は読書以外のお話もたくさんでます。映画やアイドル、キャンプなど。
あまり本を読まない人もご安心ください。





出口のない愛の迷路に迷い込んでしまったトシオとミホ。
それに巻き込まれた二人の子供。家族とは何か。
そもそもこの迷路は愛なのか?では愛とはなにか。2人にとって幸せとは何だったのでしょうか。

あなたの大事な人が精神を病んでも「それでも自分は幸せだよ」と言ってくれる事を願います。





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文責:苺
写真:なな
名古屋月曜会10.5期サポーター

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