扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

関西文学サロン月曜会[文学]

  • 2018年9月1日(土曜日) 受付開始 16:30 読書会17:00~19:00 懇親会19:00~21:00 
  • 【第43回関西文学サロン月曜会】「幼年期の終わり」

 9月1日の土曜日、関西文学サロン月曜会は3か月ぶりにホームグラウンドである大阪のラポーティア(カフェバー)に戻って来ました!


 

 今回の関西文学サロン月曜会を、一人の参加者兼サポーターとして紹介したいと思います。

 私は何年か前の夏にロバート・A・ハインラインの「夏への扉」を読んで以来、夏が来るとなぜか一冊のSFを読みたくなります。91日(土)というある意味で夏休み最後の日に読書会があり、課題本は巨匠アーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」(原題はChildhood’s End)何とも謎めいており憧憬をさそうタイトル。頭の中に色々な予定が浮かびましたが、これは参加だと申し込みました。

 読み始めると、作者の深い科学に関する知識とフィクションによって違和感なくつくりあげられた「幼年期の終わり」の世界に圧倒され、時間を忘れて読みふけりました。時の流れや自然の前になす術なくたたずむ主人公たちを見ていると、まれにみる猛暑と水害、地震に台風にと彩られた今年の夏が思い返されました。

 読了した読書会前日の晩には、せっかくなので同じ作者が書いた「2001年宇宙の旅」の映画が見ておきたくなりましたが時間切れで、読書会当日の朝を迎えました。


 

 

 今回の読書会では開会にあたり、関西月曜会では初めてとなる「ファシリテーター(決め)じゃんけん」の試みがあることが発表されました。67人の各テーブルで3回目以上の参加者からじゃんけん又は立候補でファシリテーターを決めるという、他の地域の猫町倶楽部でも行われている試みです。


 

 じゃんけんでファシリテーターを決めた後、「どのような未来が訪れるか」というアイスブレイクと自己紹介で今回の読書会は始まりました。ご一緒した私のテーブルの参加者(6人)の中には、プログラムの開発や神経細胞の研究をしている方がおられ、未来について少しだけディープな話も。

  動かない手足に微細な信号を送ることで自由に動かすことが出来るようになるという研究について聞いていると、あるいはヒト型のアンドロイドが世界に訪れるのもそう遠くないのかも知れないなと。作中にあった空飛ぶ車についても、AIや技術の開発で可能になるとか。


  

 課題本の中身の感想を語り合うと、やはり序盤の展開が話題に。さっそく1953年に発表されたものを翻訳したハヤカワ版と、序盤を著者が現代風にリライトし解説を加えた光文社版と、その場で互いに読み比べる機会がありました。

  ハヤカワ版の1950年代の冷戦時代の宇宙開発競争をテーマにしたプロローグについて、米ソ東西対立を肌で知らない2000年世代にはピンと来ないのではないかという、根っからのSFファンの言葉が耳に残りました。

 光文社版の前書きにも話題が集まりました。今ではオカルト的で陳腐化した超能力や知識が、当時最先端のものとして著者が構想していたというのは、参加者にとっても驚きだった様子で、こっくりさん的なものが西欧世界にあることを初めて知ったという声もありました。


  

 しばらくすると話題は、作品の鍵として描かれてる「オーバーロード」「オーバーマインド」、人間の「黄金期」と「最後の世代」という進化や、オーバーロードがもたらした平和で満たされた社会とライフスタイルに集まりました。

 ・みんな同じような外見で人間より理解が何十倍も速いオーバーロードは進化してオーバーマインドになることがなぜできないのか。

・子どものオーバーロードや学校があるのか、あるいはオーバーロードはAIなのか。

・研究者が研究を止め、技術革新が止まる時代が果たして来るのか。

・ラストの現人類が滅び生まれ変わる展開について、「とにかくホラーで深夜に読んでいて怖くなった」「転生し幸せなのか、ジャンたちの努力は何だったのか」、「人類が今とは違う在り方に将来なるとすればどんな形になるのか」「実存や構造といった当時の理解の枠組みが、SFとして描かれている」など。

 

 話しているとすぐに時間はベストドレッサーの時間になりました。猫町倶楽部関西月曜会では、毎回本に合わせてドレスコードを決めており、今回は「未来ガジェットもしくは宇宙」。
 

「未来ガジェット」として、機能は最新だがアイコンがちょっと昭和な腕時計から、うちわの風を風車で受け歩行できるけど横風にめっぽう弱いプラモデルの人形まで、「宇宙」をテーマにして「ドキュメンタリー風の隕石作品」等が、それぞれのテーブルから選ばれ、それぞれが準備してきたモノについて語りあいました。

 

 

 読書会の後の懇親会では、映画やマンガ、フリートーク、旅行等のテーマに分かれテーブル替えをして食事をしながら話をしました。

 以前テーブルで同席し親しくなった人と再会し、新しい本や映画・マンガ・旅先の情報交換をして、思いがけず共通の趣味やテーマを持った新しい人に知り合うこともあります。

 懇親会は参加回数が増えると、知り合いも増え、より楽しくなる気がします。初めて行ったときは結構緊張しましたが・・・。



 今回の読書会では普段少なめの男性が過半数を超え、いつもと少し違った雰囲気になりました。猫町倶楽部への初参加の方、そしてビジネス読書会等の他の読書会経由で関西文学サロンが初めてという方も2割程居られ、SFを初めて読んだ方や、SFビギナーの方も多く、SFがこんな読みやすいモノとは考えていなかったという新鮮なうれしい感想から、SFの読書会と聞いて名古屋から参加したという熱い想いを聞くことができました。

 個人的には、「引き込まれるように本を読んで面白かったけれど、語ろうとすると普段SFを読まないからか、何を語ればいいのか出てこないのが不思議だった」という感想に、本を「読むこと」と「語ること」が繋がっている読書会の醍醐味を実感しました。

 この本が発表されて以降わずか半世紀程で驚くほど世界は変わり、想像されていた未来のいくらかは実現していることに驚き、今後の半世紀で何が訪れるのかに想いをはせ、色あせないSFの古典のすごさを実感する回でした。
 

 次回(10月6日の土曜日)の課題本はロシアにそびえる文学の金字塔ドストエフスキーの作品の「白痴」。新訳の出版がリアルタイムで進んでいて、とても読みやすくなっているといわれている光文社古典新訳文庫版の「白痴」の前半である1巻と2巻が課題本になります(11月は後半の3巻と4巻をやります)。

 古今の文学者や映画監督、クリエイターによって語られてきたドストエフスキーの文学。既読の方も未読・積読の方もぜひこの機会にどうぞお待ちしています。




文・写真 SSK 

 

 

関西文学サロン月曜会ポイント

〇猫町倶楽部の読書会には、「他人の意見を否定しない」という、本を読んで感じたことをお互い自由に話すためのルールがあります。猫町倶楽部は読書会を通じた交流の場であり倶楽部活動。課題本の読了という唯一の共通点のもと、集った多彩な参加者との読書会を楽しむためのルールです。

関西文学サロン月曜会では、毎回課題本に合わせた「ドレスコード」があり、6人ほどの各テーブルごとにベストドレッサーを相互に決めます。

読書会の課題本発表と参加者募集は、だいたい1~2か月程前に始まり、参加申込は2週間前あたりから大きく増え始め、定員に達するまで、回によって変わりますが前日あるいは前々日等まで募集が続きます。参加者は20代~40代を中心に幅広い年齢層の方がおられ、文学はほとんど読まないので読むきっかけにと参加される方からディープな文学ファンまで様々な方がおられます。

 

 

 

 

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