扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

名古屋文学サロン月曜会[文学]

  • 2019年6月5日(水) 
  • 月曜会名古屋会場 ブッツァーティ『神を見た犬』

写真の説明はありません。

「いやー、今日も盛り上がったねー」
「ブッツァーティって、最初うまく発音できなかったけど読んでみたらおもしろかったよね。どのテーブルも楽しそうだった」
「ねー。しかも途中で外見たら黒い犬が歩いてたの」
「ほんとー? できる犬だなー」

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梅雨入り間近と思われる6月5日(水)深夜。
人通りが少ない名古屋駅近くの道を興奮気味に話しながら歩いているのは猫町倶楽部 文学サロン月曜会(通称月曜会)のサポーターたち。
この日は名古屋駅近くの人気喫茶店(カフェではなく喫茶店)「KAKO柳橋店」でイタリアの奇才ブッツァーティの「神を見た犬」の読書会と懇親会が行われていました。その帰り道のこと。

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画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、座ってる(複数の人)、食事(複数の人)、室内

「全体的に星新一のショートショートみたいだって感想が多かった」
「短編集だけど、タイトルに『神を見た犬』を選んだのがよかった。読みたくなるよね」
「読後に余韻を残してあって、受け手によって印象が変わるようにしてあった。同じ話でも全然違う受け止め方をする人がいておもしろかった」
「人の意見を否定しないって、そういうところを楽しめるからいいよね」

画像に含まれている可能性があるもの:1人、座ってる、テーブル、室内


「信仰にまつわる話も多かったよね。イタリア人の作者はキリスト教をどう捉えていたのか、皮肉っていたのかっていう話にもなった」
「人間観察がよくできていて、”あるある“が多い。人間の思い込みって滑稽だよねって話もした。『コロンブレ』とか『7階』とか、思い込みで自分に呪いをかけて、その結果…ってなってるように思える」
「『7階』が『世にも奇妙な物語』っぽいって盛り上がった。暗―いドアを明けてタモさん出てきそうじゃない?」
「わかるー!」
「『7階』は最初からオチがわかるけどおもしろいよね。病院じゃなくて社会や会社でも同じことはありえるし、結局人間は死に向かっていくからその比喩なのかもって感じもしたし」

と、突然ひとりが立ち止まって横道を見た。道の奥は真っ暗。
「どした?」
「今そこからなんかが見てる気がした」
「なにもいないよ?」
「なんか黒っぽいのが動いたみたいだったんだけど。犬っぽいのが」
「やめてよー。まんま『神を見た犬』じゃん。こわっ」
「犬じゃなくて鵺(ぬえ)じゃない?」
「もっとイヤだわ。京極夏彦か!夢枕獏か!」

「じゃあ『神を見た犬』はどうだった?」

画像に含まれている可能性があるもの:1人、座ってる、食事、テーブル、室内、食べ物

「心の中にある罪悪感が犬の形となって現れたのではって話になった」
「神を信じているふりをしているだけで内心は監視されている恐怖でいっぱい。結局神を信じていないよね」
「犬好きの人がいて、途中から犬がいじめられているのがかわいそうで、犬の無事が気になってハラハラして読んだって」
「確かにかわいそうだった」

と、ひとりが後ろを振り返る。
「ねえ、黒い犬がいる」

画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、座ってる(複数の人)

数メートル後方、黒い犬がまっすぐにこちらを見上げている。
こんばんは、と言わんばかりにぱたりぱたりと尾を振って。

「たまたま、でしょ」
「でもこの時間だよ?そもそも大都市名古屋に野良犬なんている?」
「夜の散歩が趣味の飼い犬なのかもよ。大都市名古屋は都会の田舎だから野良犬だっているよ、きっと!
えっと。ほかに話題になった作品は?」

画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、座ってる(複数の人)、室内

「『マジシャン』は作者自身を投影していそうとか、自分の内面を整理するために書いたのかなって思った」
「通して読むと『天地創造』で始まり『この世の終わり』で終わるのがおもしろい。聖書に合わせて創世記で始まって黙示録で終わるのになぞらえてるのかもっていう意見があった。深いねー」

「犬といえば、ドレスコードが『犬』だったよね!」

画像に含まれている可能性があるもの:4人、、スマイル、立ってる(複数の人)、室内

「愛犬にちなんだアイテムだったり、ドッグにかけた服だったり、いろいろあったよね」
「猫町には珍しく犬でいっぱいだった」

「ねぇ、まだいるんだけど」
振り返ると先ほどの黒い犬が飲食店のゴミ袋のニオイをふんふんとかいでいる。
「気のせいでしょ。たまたまでしょ」
声に反応したのか、犬は首をこちらに向ける。

写真の説明はありません。

「いや、見られてるよ、絶対」
「やめてよー」

サポーターたちはスピードを上げて人通りが多い大通りに向かって歩き続ける。

「え、えーと。読書会。楽しかったね!」
「そ、そうだね!懇親会も盛り上がった!初めての人とか2回目ですって人が何人も来てくれて、嬉しかった」

画像に含まれている可能性があるもの:4人、、スマイル、座ってる(複数の人)、飲み物、テーブル、室内

画像に含まれている可能性があるもの:1人、座ってる、室内

「主宰のタツヤさんがよく『3回続けて出ると気が合う友達が見つかるし楽しくなる』って言ってるから、また次も来てほしいね!」
「だね!次回は7月10日、夏目漱石の「明暗」だよ。久しぶりの漱石だから文豪好きな人もそうでない人も、たくさんいろんな人に来てほしいね!」
「ね!そして月曜会を好きになって、サポーターにもなってほしいね」

「そうなんだよ。猫町はさ、サポーターが1番楽しいんだよ。そういう場所になってほしいんだよね」

ん?と顔を見合わせる。
突然後方から聞こえた、年配の男性の声。

ゆっくり後ろを振り返ると、黒い犬がちょこんと座って照れくさそうに首をかしげていた。

※このレポートは読書会の感想を基にしたフィクションです。たぶん。

■次回のお知らせ■

開催日時:7月10日(水)18:30受付開始 19:00読書会開始
課題本:夏目漱石『明暗』
会場:KAKO柳橋店

猫町倶楽部 名古屋文学サロン月曜会はSNS「mixi」のコミュニティを中心に情報交換をしています。コミュニティは承認制ですので、登録の上お気軽に申請してください。
mixiコミュニティ『名古屋文学サロン月曜会』 http://mixi.jp/view_community.pl?id=2226186


文責:ゆうみ
写真:月曜会11.5期サポーター一同

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