扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2014年3月19日 
  • 【動画付】猫町UG&東京藝術部合同イベント『会田誠を読む』

「エロティシズムの内的体験は、その体験者が、禁止の侵犯へ駆り立てる欲望に対して、さらには禁止の根底をなす不安に対しても、多大な感受性をもつことを要求する。」

 ―ジョルジュ・バタイユ、酒井健訳『エロティシズム』




春の気配も近づく319日、新宿歌舞伎町のロフトプラスワンで猫町UG・東京藝術部による読書会合同企画を行いました。

 今回は現代美術家である会田誠さんをゲストに迎え、その著作3冊を課題本にしての一大企画。更にはパフォーマンスや3次会までイベントが用意されているということで、受付はロフトプラスワンらしからぬ午前11時半という健康的な時間からのスタート。それにも関わらず90名近くの方々にお集まりいただきました。

猫町UGといえばお馴染みとなりつつあるドレスコードマスク。普段は人目が憚られ読書会で話題に出来ないことも、仮面を被り私じゃない私になることで自然と語る事の出来てしまう―そんなドレスコードですが、合同企画ということで今回は特別。参加者全員に、受付で会田誠さんが今回のために描いてくれた「おにぎり仮面」をプレゼント。

オープニングを飾るのは、若林美保さんによるパフォーマンス。顔面も全て覆ったラバースーツによる匿名的な舞いは、日常から非日常への入口であり誘い口でもあります。


パフォーマンスの後は、UG隊長・チアキさんによる猫町倶楽部の趣旨とスケジュールについての説明の後、会田誠さんのご紹介。


いよいよ読書会の開始です。今回は課題本3種類に加え、3冊全部読了した班という、計4種類のテーブルが作られています。




課題本の1冊目はカリコリせんとや生まれけむ。著者自身の生い立ちや家族について赤裸々に語られ、一部奥さんが代筆した本書は、人間・会田誠にぐっと踏み込むことのできる内容。「自分の子供がADHD(多動性障害)だったら…」そんなリアルな話も飛び出しました。また、話題になるのが本作の表紙の作品「滝の絵」。いかにも日本的な陽光照らす滝と苔むす山奥の水辺に、所狭しと描かれたスクール水着の少女たち。これが4×3m近い巨大な作品と知って「ぜひ実物を見てみたい!」なんて声も。

2冊目は美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか。こちらも挑発的なタイトルながら、内容は至って真面目な現代美術と個展に向けての準備録。時に中国における現代美術のエネルギーに圧倒され、時に公開制作という不慣れな環境に狼狽しながら、悪戦苦闘する仕事人としての会田誠さんの素顔が浮かび上がります。また、本作の表紙となっているのは「灰色の山」の部分抜粋。これは水墨画風の山に見えながら、その実は一人ひとり丁寧に書かれたサラリーマンの死体という代物。こちらも本来は縦3m、横7mという超巨大な作品でありながら、前述の通り細部まで緻密で描かれた異形の作品となっています。

 そして3冊目は青春と変態。こちらは他の2冊と違い、なんと会田誠さんがこれまでに書いた唯一の小説作品。有名な古典文学のパロディから始まる本作は、自らの名前を主人公に冠した青春録。捻れた趣味を持ちながらも卑屈になり過ぎず、時にそのアブノーマルな嗜好への深い思弁を垣間見せる本作は、ひょっとして自伝なのでは?というドキドキ感もありながら、明るくも後ろめたい10代という時代についてのトークに花が咲きました。また、本作の表紙となっているのは、おにぎり仮面の元でもあるオブジェ、「考えない人」。

また、3冊全て読了した班には会田誠さん自身が読書会に入ってもらうことに。課題本や自身のことについて時に熱く、時に赤裸々に語ってもらいました。ハードルが一番高い班であるにも関わらず、今回一番人数が多かったのが三冊読了者の班であるというのが参加者の熱気の高さを表しています。





 

休憩を挟んで、まずはベストドレッサーの発表から。今回はドレスコードのマスクが会場配布という形でしたが、それでも選ばれた方々はおにぎり仮面に合わせた服装、会田さんの作品に合わせた衣装、小説の登場人物のコスプレ、そして自らの身体に刻まれた意匠(!!)と人様々。会田誠さんにもベストドレッサー賞を1名選出してもらいましたが…決め手は何だったのでしょう?






 

本日のプログラムはまだまだ折り返し。続いては会田誠さんのトークショー。『青春と変態』に続く小説についての構想や、それに関連する美術大学・美術予備校についてのあれこれについて、少しばかり緊張した面持ちで話す会田誠さん。話す内容も興味深いですが、それ以上に語るその佇まいが一つの作品として成立していたように見えるのは気のせいでしょうか。




後半では参加者の質疑応答タイム。参加者の言葉にしっかりと耳を傾け、丁寧に答えようとする会田誠さん。それは挑発的でインモラルな作品が生み出すイメージとは正反対の、人たらしで紳士的な人間、会田誠の姿でした。会った人誰もが好きにならずにいられない、人柄に触れた人全てが親しみを持たずにいられない―そんな魅力的な佇まいが何より印象的でした。

 

そして次は七菜乃(なななの)さん、一鬼のこ(はじめきのこ)さんによる緊縛パフォーマンス。お二人が今回のテーマに選んだのは、個展でのゾーニングの問題でも取り上げられ、マルキド・サドの表紙にも使われた会田誠さんの作品「犬」。包帯姿のショッキングなビジュアルに会場が騒めきながらも、その陶酔と恍惚が入り混じり、苦痛が慈愛に昇華されていくようなステージが進むにつれ、次第に参加者の皆が引き込まれていく。自分自身も最初は…と思っていたはずなのに、その姿が物象化され美へと侵犯していく様子には揺さぶられ、縄だけでなく信頼によって結ばれていくそのパフォーマンスを魅入らずにはいられませんでした。

 

これにてロフトプラスワンのでの催しは終了。移動の前に記念撮影。今回は全員におにぎり仮面が配布されているということで、読書会参加者には全員仮面を被っての記念撮影をパチリ。

 

まるで加工された写真にも見えるし、個性や匿名性について問いかけるようでもある、そんな不思議な集合写真。

地下のロフトプラスワンから出てお次は懇親会。読書会で話きれなかったあの話、ベストドレッサーの印象的な姿、そしてゲストのパフォーマンス…。話題には事欠かない様で、否応なく盛り上がっていました。

本日のイベントはまだまだ終わらない。この後は3次会でもある猫町ナイトの会場へ…の予定ですが、ここで主催者のタツヤさんからちょっとした提案。移動ついでに、おにぎり仮面を付けたまま歌舞伎町を練り歩こうというフラッシュモブを行いました。道行く人が思わず振り返り、交番のお巡りさんもびっくりな、参加者がアートの主体となる街中パフォーマンス。




そして猫町ナイト

本企画のコンセプトは「音楽好きのメンバーをいきなりクラブ
DJデビューさせる」そして「ダンスフロアから失われてしまったチークタイムを復活させる」。藝術部やUGだけではなく、アウトプット勉強会や文学サロン月曜会、シネマテーブル水曜会といった各分科会のサポーターがDJとなってまだまだ遊び足りない参加者、猫町ナイトから参加した人たちを盛り上げてます。

人生初DJにはサポーターも流石に緊張気味?





中には手慣れたアナログレコードでDJを行うサポーターも。




  また,DJデビューするのは猫町のサポーターに限りません。これまでゲストとして猫町倶楽部に関わってくれた文化人の方々にDJデビューしていただくのも猫町ナイトの特徴。本日DJを行ってくれたゲストは音楽評論家・鈴木淳史さん、エッセイスト・紫原明子さん、文筆家・吉川浩満さん、AV監督・二村ヒトシさん、そして本日お世話になったロフトプラスワンのブッキングプロデューサー・田実健太郎さんの5名。皆さん猫町ナイトで人生初DJを経験した人ばかり、本日が初DJという方もいましたが皆さん揃って盛り上げてくれました。








 丸半日にも及ぶ、本日のイベントもようやく終了。最後まで参加してくれた方はお疲れ様でした。今回は藝術部・UGが合同で行うという初めての形での開催となりましたが、参加してくれた皆さんに楽しんでもらえたのなら、サポーターにとってそれに優る喜びはありません。次回もお待ちしております。

【togetterまとめ】猫町倶楽部「会田誠を読む」猫町UG×東京藝術部コラボ企画

【togetterまとめ】猫町ナイト・東京20160319

文:次郎

写真:テラ

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