扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

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  • 第121回東京文学サロン月曜会 町田康『しらふで生きる 大酒飲みの決断』『告白』『くっすん大黒』

東京文学サロン月曜会[文学]

  • 2020年1月27日(日) 読書会&トークショー:16:30~19:15 懇親会:19:30~21:30
  • 第121回東京文学サロン月曜会 町田康『しらふで生きる 大酒飲みの決断』『告白』『くっすん大黒』

どうも人というものは色んな性分がございまして、その中でも読書が好きという人も多くございます。そんな人たちが集まる猫町倶楽部ですが、この度、町田康先生をお招きしての特別イベントを開催することになりました。

場所はいつもの代官山chano-maですが、さすが人気作家、今回は募集開始したとたんに、五千に五千また五千、合わせて一万五千の参加者が、というのは大げさですが、とにかく、代官山会場では久しぶりの満席になりました。

課題本はこの3冊からの選択です。



さて当日。なんといっても特別イベントですし、人数も多いしでどんな雰囲気になりますかね、初参加も多いけどやっぱりみんな町田康ファンの人なのかな、などということをわあわあ言いながら京成志津駅を出まして、勝田台から特急に乗りまして、京成船橋で降りまして、そこから船橋FACEの中を真っ直ぐに、JRに入りまして、総武線の快速で江戸川を越えまして、錦糸町駅で地下鉄半蔵門線に乗り換えまして、そこから渋谷まで参りまして、渋谷から東横線で代官山、そこから歩いてchano-ma代官山店に着いた頃にはずいぶんくたびれた。

近いところ遠いところから参加者が続々と会場に訪れ、開始時間が近づくと、ようじょこのように大賑わいとなりました。

まずは注意事項及び主催者のタツヤさんの挨拶、挨拶途中で町田先生が入場されました。

各班で進行役となるファシリテーターを決めて……、



いよいよ読書会の開始となります。

読書会は、唯一のルール「人の意見を否定しない」を守りつつ進んだわけですが、今回は課題本ごとに班が分かれていますので、詳しい様子は他の人たちに語っていただきましょう。ということで、よろしく。



『くっすん大黒』
『くっすん大黒』は町田康の処女作なり。我は初めて読みしとき、その音楽的なリズムを感じる文体にたいそう魅了せしものなり。読書会においても文章についての感想が多く見られたり。また、登場人物の特異さも話題にあがれり。個性的な人物が続々と現れ出でたるところは読書の楽しみを実感せしものなりとする意見が見受けられり。他、大黒の意味するところについても論を交わしたり。他の参加者より本にまつわる異なる思いや有益たる知識を聞きたることこそ読書会の大いなる魅力なれ。
なお、我は本作以外の町田作品を読まざりき。読書会に参加するものはすべからく他作も読むべきものと思われ、当日の朝は冬の寒きも相俟って心中安んじること能わざりしが、その実は我に似て初心者のものも多くあり、胸をなでおろした次第なり。また、同じ班に居合わせた町田を好みて読むものより、お薦め作品を賜りしことは有り難きことなり。
くっすん大黒は短き作品なれど、語るべき点は大なりしことは参加者の一致するところなり。


『告白』
はい、では『告白』読書会の感想です!
『告白』は、明治時代に起きた「河内十人斬り」という殺人事件をモデルにした小説です。なんと文庫本で842ページという、この本自体が凶器として使えちゃうんじゃないの!? という分厚さで、私は本屋で手に取って京極、じゃなかった驚愕しちゃったんだけど、でもなんと今回の読書会ではこの本を選んだ人が一番多かったんだって。参加者の意気込みがうかがえるよね。
内容はというと、主人公である熊太郎の心理描写が凄くて、どんどん引き込まれていっちゃった。悪いところだらけの熊太郎は、不幸な目にあいながらも、それでも何とか生きようとして、でも、自分が思っていることをうまく言葉にできなくて、周りの人も熊太郎のことを、何も、分かろうとしていなくて、周りから距離を置かれて、それで、それで……っ、…ちょっと待ってて …………    お待たせ。ごめんね。でも笑えるシーンもいっぱいあって、その話でも盛り上がったよ。あと、この事件をもとにした河内音頭とか、作中に出てくる河内弁の話とか。私が気づかなかったことに注目した人も多かったから、それを踏まえてもう1回読みたくなっちゃった! 


『しらふで生きる 大酒飲みの決断』
「『しらふで生きる』は、禁酒した町田先生が、その過程で経験したり考えたりしたことをつづったエッセイだよ」
―ということは、この本を選んだ参加者は大酒飲みばかりだったんですか?
「いや、飲まない人も意外と多かったねー。酒じゃなくても止められないことがある人も多いから、参考になったと言ってたよ。私は飲むけど」
―知ってます。
「この本も飲みながら読んだんだけど、酒飲みの気持ちがつづられているところは共感したね。基本的にはこの本は同意するところしかなかった」
―じゃあ何で酒止めないんですか。
「それと表現が独特で面白かったと思ったので、そういう話もしたよ。私の考えは玉川通りに落下していった、とか。あとはちょっと脱線して好きなお酒の話とかもした。町田康はまだ、この本しか読んでないけど、小説はどんな感じなのか気になるなあ」
―読みましょう!
「もう1杯飲んでからね」



ありがとうございました。持つべきものは友達だねえ。読書会中は町田先生が各テーブルを回り、参加者からの質問に答えていらっしゃいました。



読書会後は町田康トークショー。読書についてユーモアを交えつつ、以下の3点について語っておられました。
(1)1冊の本を100回読んで読みを深くする。
(2)読書は最短距離を行かない
(3)まずは孤独に耐えて一人で本と向き合う



皆さんも真面目に聞いています(この開催レポートも100回読んでくださいね~)。



「賢くなるただ1つの方法は本を読むことである」という言葉でトークショーを締めた町田先生は、そのまましらふで帰られたのでした。ありがとうございました!

さて続いてはベストドレッサー賞の発表です。今回のテーマは「パンク」または「白黒」。苦労された方も多いようでしたが、選ばれたのはこちらの方々です。



ここからは懇親会に入ります。食事やお酒も登場し、席を移動して他の班の人と話す人も。




恒例の猫町堂古書店も開かれました。家から本を持ってくれば、テーブルの上の本と交換することができます。

そうこうしている間に、石油ファンヒーターからラブミーテンダーが流れる時間も過ぎ去って、お別れの時間となりました。参加者は名残を惜しみつつ家に帰ったり、3次会に参加してまた大いに盛り上がったりしたという、2020年1月の東京月曜会のお話でありました。

文:たかはし  写真:ハセ、たかはし

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